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ウサギ小話 番外編「ハリネズミのお話」その1

これから書く事はすべて本当にあったことです。

こう書くとまるですべて嘘みたいに聞こえますが、私の動物病院で日本では初めてハリネズミから、今まで日本にいなかった真菌(簡単にいうと水虫菌)が分離された時のことを書いていきます。

分離に成功されたのは、当時千葉大学真菌医学研究センターにいらっしゃった佐野文子先生です。

先生はこの発見をきっかけに、海外から輸入される家畜や犬猫以外の、いわゆるエキゾチック系の愛玩動物についても動物由来感染症にたいする注意が必要な事、

細菌やウイルスによる感染症以外に、真菌にも目を向けなくてはいけないことを、積極的に発表され情報発信されています。

ことは2001年の夏、一本の電話から始まりました。

電話で飼主の方は「ハリネズミを診ていただけますか」と問いました。当時はもとより今も私はハリネズミが得意なわけではありません。

ハリネズミといってもヨーロッパ産、アフリカ産、いろいろありますし、当時はヨーロッパ産のを遠くから見た事があるだけでしたので、「ハリネズミは診た(実際は見たことも)ことがありません」と答えました。

「そうですか〜」という飼主さんの声とため息が妙にちかいので、待ち合い室をのぞくと、飼主さんは待合室のすぐ外から電話をかけていらっしゃったのでした。

「すでに来院されているのなら」という事で診察させていただきました。

つれてこられたハリネズミはアフリカ原産のヨツユビハリネズミで、モルモットの子供くらいの大きさでとても愛嬌のある顔をしていました。

伺った症状は、針(ハリネズミですから)の根本に小さなたぶんダニがみえるということと、脱針(ハリネズミですから)して針がまばらになってしまっているとのことでした。

皮膚を拡大鏡で見てみると、表面はカサブタがうきあがり、針は折れたり抜けたりして、合戦のあとの荒野のようです。針の根本に白いダニがうごめいていました。さらにこのダニを顕微鏡で観察するとヒゼンダニという種類でした。

ヒゼンダニは皮膚の下にトンネルをつくり、ひどい痒みとともに皮膚炎をおこします。脱針と炎症の原因はこのダニと推測されました。

まず、ヒゼンダニ退治をすることとなりましたが、事はそれだけではすみませんでした。

長くなったのでこの続きは次のプログに書いていく事にします。